スモールプロスポーツクラブ経営シリーズ③~「スポーツを通じて他の市場を開拓」しよう!~

スポーツマーケティングの大きな魅力・役割の1つが、「スポーツを通じて他の市場」を開拓・発展させることができる点にあると思います。
簡単に言えば、「スポーツを使ってマーケティングをする」というような意味ですね。

例えば、次のようなイメージです。

・「観光客を増やすために」スポーツイベントを開催する
・「地域活性化のために」スポーツクラブを運営する
・「国と国の交流のために」スポーツの試合を行う
・「農業の人手不足を解消するために」スポーツ選手を農家に派遣する

このように、「〇〇のためにスポーツの~を行う」ということが、「スポーツを通じて他の市場」を開拓・発展させるスポーツマーケティング」になります。
つまり、「観光業」や「飲食業」「農業」などのようにスポーツ活動とは直接的には関係のない市場や業界に対して「スポーツを活用する」ことで開拓、発展させていく、という意味になります。

最近では、このような「スポーツマーケティング」が社会に対して果たす役割が非常に大きくなってきています。

例えば、「観光客を増やすために」スポーツイベントを開催する、という取り組みは「スポーツツーリズム」と呼ばれるようになり、「スポーツ庁」や各地域もこうした取り組みに大きく力を入れるようになってきています。

週末にリーグ戦のあるJリーグなどは、サポーターがアウェイゲームの応援に相手クラブのスタジアムを訪れています。数百から数千単位での人の移動が生まれ、現地での消費も期待できることから、クラブを持つ都市は自治体とも連携しながら、サッカーを中心とした観光客誘致として力を入れています。
遠方のアウェイチームのユニフォームをまとった集団が、その土地のものを食することは、アウェイツーリズムの楽しみの一つと言えますね。

特に、Jリーグクラブは全国に広がっているため「大都市~地方だけでなく、地方~地方の人の流れ」ができますよね。
ですから、各クラブ、対戦相手のサポーターの取り込みには力を入れていて、地元の観光協会と組んで、アウェイでの試合の際には、クラブと一緒になって地元の観光情報を提供し、次のホームゲームへの誘客につなげる取り組みなんかも積極的に展開しています。

私の応援する高知ユナイテッドSCも、このようなスポーツツーリズム、というかアウェイツーリズムを大いに活用しなければ、Jリーグ昇格後、観客動員で苦戦してしまうと思います。ぜひ、今のうちからこのような取り組みを自治体と共に取り組んでほしいですね。高知の良さを高知ユナイテッドSCというコンテンツを使って発信していってほしいですね。高知県は坂本龍馬だけではないところを全国に発信していってください(笑)。

また、「町のにぎわいを高める」という意味では、今まで不便な立地に存在していたスタジアムやアリーナを、市街地や町の中心地に建設することによって、「スポーツを通じた街づくり」に活かしていこうとする取り組みなども全国各地で広まりを見せてきています。
私の大好きな、Bリーグチーム、佐賀バルーナーズも佐賀駅から徒歩圏内に日本有数のアリーナをホームアリーナとして使用できるようになったため、バスケットボールの観客動員増はもちろん、様々なイベント(オリンピアンを招いてのアイスショーなど)を開催し、ここは佐賀か?と思うくらいの行列を眺めたときは軽く感動しました。

こうした「スポーツマーケティング」を実施していく場合には、スタート地点は「スポーツ界の中の課題やニーズ」というよりも、「社会や地域の中の課題やニーズを発見する」ことがスタートになります。

つまり、「スポーツが好きかどうか」「スポーツに詳しいかどうか」といったことはあまり重要ではなく、「社会や世の中に対して、どのようにスポーツを活用していけばよいか」という視点を持つことが大切になるんですね。

「スポーツ市場」の中で、「スポーツ用品市場」や「プロスポーツ市場」といった市場が、日本において、これからも右肩上がりで伸び続けるということは難しい面があると思います。

「少子高齢化」の影響で、これから日本の人口は右肩下がりになっていく中で、「スポーツをする人」「みる人」も減っていくため、そうした中でスポーツ市場を伸ばしていくのは非常に難しいからです。

ただ、「スポーツを使って他の市場を伸ばす」ことは、大いに可能性があると思います。

特に、スポーツと相性のよい「観光業」「飲食業」といったサービス業は、国内の人々だけではなく海外の人々を呼び込むことで市場規模を拡大していくことができるため、そうした市場が「スポーツを活用する」というニーズは十分にあるのではないかと思います。

日本のJリーグやBリーグは、アジア圏ではトップレベルとの認識があり人気も高いので、インバウンドツーリズム×スポーツツーリズムは、各クラブ、観光業界、自治体などが協力して取り入れるべき施策ではないかと考えています。

ただ、こうした「スポーツを活用するマーケティング」においても非常に重要となることがあります。
それは、「スポーツ(クラブ)そのものに価値がある状態」を作り出しておかなければならない、ということです。

「スポーツイベント」を開催して観光客を増やそうと思っても、そのスポーツを統括する協会や、スポーツ団体が不祥事などを起こしてしまったり(最近多いですよね・・・)、大会に出場した選手がドーピング・八百長などをしてしまえば、そのイベントや町のイメージなども大きく損なわれてしまうことになり、むしろ逆効果になったりもします。

したがって、大前提として「スポーツを活用したマーケティング」を行うには、「スポーツ(クラブ)が価値のある状態になっていること」がとても大切で、そのための、スポーツマネジメントやスポーツガバナンスがしっかりと機能していることも求められる、ということになるんですね。

地方のスモールクラブは、正直に言うと、クラブ単体の集客力はどこも似たりよったりというところです。
ですから、いかに「クラブを利用したマーケティング」を自治体や地域、企業と協力して実施できるかが超重要になってきます。

自治体や地域にとっても、自分たちが抱える全国リーグ所属のロスポーツクラブというのは、自分たちの自治体を知ってもらえるチャンスであり、アウェイツーリズムで観光等の誘致もしやすい魅力的なコンテンツです。

お互いが手を取り合って、地域のため、クラブのため、そしてサポーターやブースター、地域住民のために「クラブを利用したマーケティング」を行っていってほしいですね。